柳秀直特命全権大使 ご挨拶
平成30年12月11日
アンマンでは、毎日の最低気温が10度を下回るようになり、すっかり冬の季節になっていますが、ヨルダン在住の皆様、ヨルダンに関心を持って頂いている皆様におかれては、如何お過ごしでしょうか。前回のご挨拶から、いつのまにか5ヶ月近くが経ちました。この間の出来事について簡単にお伝えしたいと思います。日ヨルダン関係では国王・王妃両陛下の訪日、そしてアンマン在留の日本人にとってはハンドボール男子ユースのアジア大会準優勝が大きな出来事だったと思います。
1.アブドッラー国王の訪日
11月25日から27日まで、アブドッラー国王がラーニア王妃と共に2年ぶりに訪日され、天皇・皇后両陛下に午餐に招かれると共に、皇太子・同妃両殿下ともお会いになられました。また、安倍総理との首脳会談を行い、二国間関係、地域情勢等について意見交換を行うと共に、その機会に3億ドルの開発政策借款の供与と、二国間投資協定に署名しました。
2.要人往来
(1)参議院ODA調査団
9月に参議院ODA調査団(中西祐介議員団長、元栄太一郎議員)がお見えになり、水・灌漑大臣を表敬したほか、ザアタリ・シリア難民キャンプを訪問し、青年海外協力隊員の代表や国際機関邦人職員の方々と懇談されました。また、各種経協案件視察の後、日本の無償資金援助で建設されたキング・フセイン橋を通ってパレスチナへと移動されました。
(2)計画・国際協力大臣の訪日
カウワール計画・国際協力大臣が、国王訪日に向けての経済協力案件の準備のために11月初旬に初めて訪日され、麻生副総理兼財務大臣、河野外務大臣などと会談されました。
3.内閣改造、死海周辺地域での鉄砲水による生徒の死亡
ラザーズ首相は10月11日、環境相、保健相など10名の閣僚を交代させ、6つの省を3人の大臣が見る(教育・高等教育省、環境・農業省、文化・青年省)ことにして、7名の新閣僚を任命しました。
しかるにその直後の10月25日、死海地方で鉄砲水により旅行中の21名の生徒が死亡するという痛ましい事件が起き、その責任追及の課程で、教育相兼高等教育相と観光・遺跡相が辞任に追い込まれる事態となりました。その後、二つのポストは、それぞれ暫定的に司法相と行政機関開発担当相により兼任されています。
4.私の要人訪問
この期間中、私のヨルダン政府要人への訪問のハイライトは、9月26日のラザーズ首相表敬でした。ラザーズ首相からは、日本とのこれまでの関係の評価と、日本の支援に対する感謝の念が伝えられました。首相以外では、7月24日にはグネイマート・メディア担当大臣兼政府報道官、9月25日には、ムーサ・マアーイタ政治・議会担当大臣、10月1日にはカナークリーヤ財務大臣、11月1日にはサウード水・灌漑大臣、5日にはアブロマーン青年・文化大臣を表敬しました。お辞めになった閣僚としては、7月29日にはラットゥーフ社会開発大臣、31日にはシャイヤーブ保健大臣、9月6日にはエンナーブ観光・遺跡大臣を表敬しています。
政府の閣僚以外では、9月6日にアル・カイシー下院ヨルダン日本友好議連会長を表敬し、また、10月9日にはシャワールベ・アンマン市長を表敬しました。市長からは日本との関係強化への期待が述べられました。
5.経済協力
(1)UNICEFの新規プロジェクト開始式典への出席
7月30日、日本の緊急無償援助でUNICEFがシリア難民キャンプ内で実施する「人命救助に関わる保健・栄養支援」プロジェクトの開始式のためにアズラック・キャンプを訪問しました。小児科病棟を視察した際、病院関係者から、日本の支援により、生後一年以内の新生児の死亡率が大幅に減少してきている旨の説明を受けました。
(2)UNWOMENのプロジェクト視察
平成29年度補正予算で支援している「シリア難民に対するリーダーシップ、エンパワーメント、アクセス確保及び保護」プロジェクトを視察するためにアジュルーン県女性支援センターを訪問しました。同視察に先だってアジュルーン県知事を表敬したところ、知事も視察に駆けつけてくれました。
(3)草の根・人間の安全保障無償資金協力の贈与契約署名
草の根・人間の安全保障無償資金協力に関し、9月18日、「母子保健センター超音波検診機器更新計画」の贈与契約に署名し、また、19日、「ジェラシュ・パレスチナ難民キャンプ内医療センター医療機材整備計画」の贈与契約に署名しました。前者は、ヨルダン全国20箇所の母子保健センターにおいて医療支援を行っているNGO「ヨルダン家族計画・養護協会」に超音波検査機器を供与することにより、妊婦への医療サービスの質の向上に寄与することを目的としています。また、後者は、1990年以来、ヨルダン国内のパレスチナ難民キャンプで医療支援を行ってきた実績のあるNGO「ヨルダン・パレスチナ医療援助機関」に医療機材を配備することにより、主に脆弱性の高い住民に対する医療サービスの質の向上を目指しています。
(4)草の根・人間の安全保障無償資金協力の機材供与式典出席
27日には、スーパーマーケット、ホテルや企業等から寄付される食品を貧困層のヨルダン人及びシリア難民家庭に無償で提供する活動を行うNGO「ヨルダン食糧バンク」に、冷蔵車や冷蔵・冷凍設備等を供与する「アンマン市食品冷蔵保存施設整備計画」の機材供与式典に出席しました。
(5)UNRWAの学校始業式に出席
9月2日、厳しい財政難の中で新学期を始めるアンマン市内のUNRWAが運営する小学校の始業式に、クレーンビュールUNRWA事務局長、当地外交団と共に出席し、子供たちの元気な姿を視察してきました。UNRWAは、米国の大幅な拠出削減の中で厳しい財政難に陥っており、9月27日に国連総会の際に、ヨルダンと日本、トルコ、EU、スウェーデン、ドイツが共同議長国となり、UNRWA支援閣僚会合も開催しています。我が国はUNRWAに対し、今年計45百万ドルの拠出を行いました。
6.在留邦人関係
(1)運動会
9月28日に、日本人会による恒例の運動会が開催されました。当日は好天にも恵まれ。補習校に通う子供たちや就学年齢前の子供たちも含め、百名以上の邦人の方が参加して、競技に汗を流しました。
(2)ペトラ遺跡からの退避
11月9日、ペトラ遺跡で鉄砲水が発生し、シークを濁流になって流れるという事態が生じ、ちょうどその日ペトラに来られていた邦人観光客約50人が退避するという事案が発生しました。日本の報道関係者も近隣諸国から取材に来るほど、日本では大きく報道されました。幸い、ペトラ地区では日本人も含め、犠牲者はありませんでしたが、マダバの近郊やマアーン等では死者が出る水害となりました。犠牲者の方々のご冥福をお祈りいたします。
7.男子ハンドボール・アジア・ユース選手権大会の準優勝
9月16日から26日まで、アンマンで標記大会が開催され、日本のU19チームは決勝戦まで進出しました。惜しくもカタールに敗れましたが、準優勝となり、来年マケドニアで開催されるワールドカップへの出場権を手にしました。日本の試合には連日、在留邦人の方が応援に駆けつけ、私も全8試合のうち5試合を観戦させて頂きました。
8.安全
8月10日、バルカ県フヘイス市で、治安機関の車両を狙った爆破テロ事件が発生し、翌11日には、バルカ県サルト市で、治安機関が被疑者を急襲し銃撃戦となり建物も爆破され、二日間で6名の治安機関員と3名の被疑者が死亡しました。その後、テロ事件は起きていませんが、ヨルダンにおいてテロ事件が発生するのは約2年ぶりで、依然としてテロの危険についても油断ができない状況であることが改めて認識されました。
在留邦人の皆様におかれては、日頃から報道やSNS等により最新の情報入手に努めると共に、集会など多数の人が集まる場所には不用意に近づかない等、ご自身の安全に十分な注意を払って下さるようお願いいたします。また、厳しい経済情勢が続く中、一般治安についても悪化が懸念されていますので、この点も十分注意して頂くようお願いいたします。
駐ヨルダン特命全権大使 柳 秀直
<過去のご挨拶>
1.アブドッラー国王の訪日
11月25日から27日まで、アブドッラー国王がラーニア王妃と共に2年ぶりに訪日され、天皇・皇后両陛下に午餐に招かれると共に、皇太子・同妃両殿下ともお会いになられました。また、安倍総理との首脳会談を行い、二国間関係、地域情勢等について意見交換を行うと共に、その機会に3億ドルの開発政策借款の供与と、二国間投資協定に署名しました。
2.要人往来
(1)参議院ODA調査団
9月に参議院ODA調査団(中西祐介議員団長、元栄太一郎議員)がお見えになり、水・灌漑大臣を表敬したほか、ザアタリ・シリア難民キャンプを訪問し、青年海外協力隊員の代表や国際機関邦人職員の方々と懇談されました。また、各種経協案件視察の後、日本の無償資金援助で建設されたキング・フセイン橋を通ってパレスチナへと移動されました。
(2)計画・国際協力大臣の訪日
カウワール計画・国際協力大臣が、国王訪日に向けての経済協力案件の準備のために11月初旬に初めて訪日され、麻生副総理兼財務大臣、河野外務大臣などと会談されました。
3.内閣改造、死海周辺地域での鉄砲水による生徒の死亡
ラザーズ首相は10月11日、環境相、保健相など10名の閣僚を交代させ、6つの省を3人の大臣が見る(教育・高等教育省、環境・農業省、文化・青年省)ことにして、7名の新閣僚を任命しました。
しかるにその直後の10月25日、死海地方で鉄砲水により旅行中の21名の生徒が死亡するという痛ましい事件が起き、その責任追及の課程で、教育相兼高等教育相と観光・遺跡相が辞任に追い込まれる事態となりました。その後、二つのポストは、それぞれ暫定的に司法相と行政機関開発担当相により兼任されています。
4.私の要人訪問
この期間中、私のヨルダン政府要人への訪問のハイライトは、9月26日のラザーズ首相表敬でした。ラザーズ首相からは、日本とのこれまでの関係の評価と、日本の支援に対する感謝の念が伝えられました。首相以外では、7月24日にはグネイマート・メディア担当大臣兼政府報道官、9月25日には、ムーサ・マアーイタ政治・議会担当大臣、10月1日にはカナークリーヤ財務大臣、11月1日にはサウード水・灌漑大臣、5日にはアブロマーン青年・文化大臣を表敬しました。お辞めになった閣僚としては、7月29日にはラットゥーフ社会開発大臣、31日にはシャイヤーブ保健大臣、9月6日にはエンナーブ観光・遺跡大臣を表敬しています。
政府の閣僚以外では、9月6日にアル・カイシー下院ヨルダン日本友好議連会長を表敬し、また、10月9日にはシャワールベ・アンマン市長を表敬しました。市長からは日本との関係強化への期待が述べられました。
5.経済協力
(1)UNICEFの新規プロジェクト開始式典への出席
7月30日、日本の緊急無償援助でUNICEFがシリア難民キャンプ内で実施する「人命救助に関わる保健・栄養支援」プロジェクトの開始式のためにアズラック・キャンプを訪問しました。小児科病棟を視察した際、病院関係者から、日本の支援により、生後一年以内の新生児の死亡率が大幅に減少してきている旨の説明を受けました。
(2)UNWOMENのプロジェクト視察
平成29年度補正予算で支援している「シリア難民に対するリーダーシップ、エンパワーメント、アクセス確保及び保護」プロジェクトを視察するためにアジュルーン県女性支援センターを訪問しました。同視察に先だってアジュルーン県知事を表敬したところ、知事も視察に駆けつけてくれました。
(3)草の根・人間の安全保障無償資金協力の贈与契約署名
草の根・人間の安全保障無償資金協力に関し、9月18日、「母子保健センター超音波検診機器更新計画」の贈与契約に署名し、また、19日、「ジェラシュ・パレスチナ難民キャンプ内医療センター医療機材整備計画」の贈与契約に署名しました。前者は、ヨルダン全国20箇所の母子保健センターにおいて医療支援を行っているNGO「ヨルダン家族計画・養護協会」に超音波検査機器を供与することにより、妊婦への医療サービスの質の向上に寄与することを目的としています。また、後者は、1990年以来、ヨルダン国内のパレスチナ難民キャンプで医療支援を行ってきた実績のあるNGO「ヨルダン・パレスチナ医療援助機関」に医療機材を配備することにより、主に脆弱性の高い住民に対する医療サービスの質の向上を目指しています。
(4)草の根・人間の安全保障無償資金協力の機材供与式典出席
27日には、スーパーマーケット、ホテルや企業等から寄付される食品を貧困層のヨルダン人及びシリア難民家庭に無償で提供する活動を行うNGO「ヨルダン食糧バンク」に、冷蔵車や冷蔵・冷凍設備等を供与する「アンマン市食品冷蔵保存施設整備計画」の機材供与式典に出席しました。
(5)UNRWAの学校始業式に出席
9月2日、厳しい財政難の中で新学期を始めるアンマン市内のUNRWAが運営する小学校の始業式に、クレーンビュールUNRWA事務局長、当地外交団と共に出席し、子供たちの元気な姿を視察してきました。UNRWAは、米国の大幅な拠出削減の中で厳しい財政難に陥っており、9月27日に国連総会の際に、ヨルダンと日本、トルコ、EU、スウェーデン、ドイツが共同議長国となり、UNRWA支援閣僚会合も開催しています。我が国はUNRWAに対し、今年計45百万ドルの拠出を行いました。
6.在留邦人関係
(1)運動会
9月28日に、日本人会による恒例の運動会が開催されました。当日は好天にも恵まれ。補習校に通う子供たちや就学年齢前の子供たちも含め、百名以上の邦人の方が参加して、競技に汗を流しました。
(2)ペトラ遺跡からの退避
11月9日、ペトラ遺跡で鉄砲水が発生し、シークを濁流になって流れるという事態が生じ、ちょうどその日ペトラに来られていた邦人観光客約50人が退避するという事案が発生しました。日本の報道関係者も近隣諸国から取材に来るほど、日本では大きく報道されました。幸い、ペトラ地区では日本人も含め、犠牲者はありませんでしたが、マダバの近郊やマアーン等では死者が出る水害となりました。犠牲者の方々のご冥福をお祈りいたします。
7.男子ハンドボール・アジア・ユース選手権大会の準優勝
9月16日から26日まで、アンマンで標記大会が開催され、日本のU19チームは決勝戦まで進出しました。惜しくもカタールに敗れましたが、準優勝となり、来年マケドニアで開催されるワールドカップへの出場権を手にしました。日本の試合には連日、在留邦人の方が応援に駆けつけ、私も全8試合のうち5試合を観戦させて頂きました。
8.安全
8月10日、バルカ県フヘイス市で、治安機関の車両を狙った爆破テロ事件が発生し、翌11日には、バルカ県サルト市で、治安機関が被疑者を急襲し銃撃戦となり建物も爆破され、二日間で6名の治安機関員と3名の被疑者が死亡しました。その後、テロ事件は起きていませんが、ヨルダンにおいてテロ事件が発生するのは約2年ぶりで、依然としてテロの危険についても油断ができない状況であることが改めて認識されました。
在留邦人の皆様におかれては、日頃から報道やSNS等により最新の情報入手に努めると共に、集会など多数の人が集まる場所には不用意に近づかない等、ご自身の安全に十分な注意を払って下さるようお願いいたします。また、厳しい経済情勢が続く中、一般治安についても悪化が懸念されていますので、この点も十分注意して頂くようお願いいたします。
駐ヨルダン特命全権大使 柳 秀直
<過去のご挨拶>