柳秀直特命全権大使 ご挨拶
平成30年7月23日

ヨルダンでは連日30度を超える真夏の時期になっていますが,ヨルダン在住の皆様、ヨルダンに関心を持って頂いている皆様は如何お過ごしでしょうか。前回、3月の時点での活動報告から、ラマダンを挟んで早4ヶ月近くが経とうとしています。この期間中、当地の邦人にとって最大の出来事は、4月にアンマンで行われた女子サッカー・アジアカップ大会におけるなでしこジャパンの優勝でした。一方、両国政府間ではなんと言っても4月末から5月1日にかけての安倍総理の3年ぶりの訪問が、そしてヨルダンにとっては6月の政権交代が最大の出来事と言って良いでしょう。
以下、この期間の出来事について簡単にご紹介したいと思います。
1.日本からの要人訪問
(1)安倍総理大臣のヨルダン訪問
安倍総理ご夫妻は4月30日から5月1日にかけて,中東歴訪の一環として、約3年4ヶ月ぶりにヨルダンを訪問されました。ヨルダンでは限られた日程の中で、アブドッラー2世国王陛下、ムルキー首相(当時)との会談が行われた他、同行した経済人にヨルダン側の経済人も加わった拡大午餐会が開催されました。その後、安倍総理は内外共同記者会見を開き、今回の訪問を総括されました。今回の訪問においては、総理と国王陛下は,両国の関係を戦略的パートナーシップに格上げすることに合意すると共に、この機会に、廃棄物処理場の状況改善のための上限額16億3100万円の無償資金協力プロジェクトについての交換公文が署名されました。また、経済人の同行がヨルダン側から高く評価されるなど、実り多い訪問となりました。
(2)河野外務大臣の訪問
河野大臣は4月28日から30日までヨルダンを訪問し、28日から29日にかけては、アカバでテロに関する国際会議に出席され、29日夜には,死海のほとりのホテルで、「平和と繁栄のための回廊」第6回四者閣僚級会合に出席し、ヨルダン、イスラエル、パレスチナと共に、パレスチナの閣僚と共に、ジェリコ農産加工団地(JAIP)の進展,及びJAIPとアレンビー/キングフセイン橋間の物流環境の整備と発展について議論が行われました。また、30日朝にはアンマンで、米上院の承認を受けた直後にヨルダンを訪問したポンペオ米国務長官と会談を行っています。
(3)木原稔財務副大臣の訪問
5月8日から9日にかけて、死海のほとりのホテルで開催されたEBRD(欧州復興開発銀行)の総会に出席するために木原財務副大臣がヨルダンを訪問され、この機会にザアタリ難民キャンプを訪問し、また、ファーフーリー計画・国際協力大臣(当時)と会談しました。同会談にはマルハス財務大臣(当時)も加わり、ヨルダン政府の財政・税制改革について説明すると共に、日本からの円借款供与についての強い期待が表明されました。
(4)佐藤正久外務副大臣の訪問
7月5日から7日まで、佐藤外務副大臣がヨルダンを訪問されました。副大臣はヨルダン政府のラウジー外務次官、カウワール計画・国際協力大臣、フレイハート軍統参議長と会談した他、日本の援助で建設中のペトラ博物館、そしてザアタリ・シリア難民キャンプ、シリアとの北部国境、日本が国際機関経由で支援した過激化防止センターなどを視察されました。また、当地の邦人企業の代表、国際機関の邦人職員、青年海外協力隊員とも懇談の機会を持ちました。
2.政権交代
ラマダン月の5月末から6月初めにかけて、政府の所得税法改正案、及び電気代、ガソリンの値上げに反対する大規模なデモが発生し、6月4日、ムルキー首相(当時)は辞表を提出し、ラザーズ前教育大臣が新しい首相に指名され、14日にラザーズ内閣が発足しました。前内閣から16名の閣僚が留任・横滑りするする中で、内閣交代の原因が経済政策にあったこともあり、中心的な経済閣僚はほぼ一新されました。電気代、ガソリンの値上げは6月1日には国王によって撤回され、所得税改革も一旦法案は撤回されましたが、所得税改革はヨルダンの財政再建に必要とされるので、新政権としても向き合わなければならない課題です。
3.経済協力関係
4月3日にウトム地方行政省次官の立ち会いの下、「経済社会開発計画・廃棄物分野」の機材(ブルドーザー、ホイールローダー等)供与式に、また、4日にはガッザーウィー水灌漑相(当時)の立ち会いを得て、「経済社会開発計画・水分野」の機材(カーゴトラック)供与式に出席しました。また、3月から7月にかけて,今年2月に我が国が補正予算から難民用プロジェクトのために予算をつけた国際機関(UNHCR、UNRWA、FAO)との間で、我が国の貢献をプレイアップする式典を行いました。
また、日本政府は4月24日、ブラッセルで行われたシリア難民支援のための国際会議において、新たに総額1400万ドルの支援を表明。内訳は米国の拠出大幅引き下げに伴い財政難にあえぐUNRWAに1千万ドル(うち200万ドルはヨルダン分)、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、UNICEF(国連児童基金)にそれぞれ200万ドルずつ(うちそれぞれ100万ドルがヨルダン向け))となっています。そのうち、UNRWAについてはUNRWAが運営する26の保健センターに医薬品を届け質の高い保健サービスを提供する等の内容で、5月13日にバルカ県バカア保健センターで、プロジェクト開始式典が行われ、また、UNHCRについては、北東部の医療分野のための支援プロジェクトについて、6月26日にザアタリ難民キャンプにて、プロジェクト開始式典が行われ、いずれも私が出席しました。
以上の式典においては、先方のスピーチにおいて、それぞれ日本政府への深甚なる謝意が伝えられています。
4.私のヨルダン側要人との会談
(1)閣僚表敬
4月26日にムバイヤディーン内務大臣、7月10日にフネイハート農業大臣を表敬しました。また、前述の内閣の交替を踏まえて、新たに就任した閣僚を6月末から順次表敬し、新内閣の方針を聴取しました(キスビー公共事業大臣、カウワール計画・国際協力大臣、ハンムール貿易投資供給大臣(以上6月28日)、ザワーティー・エネルギー鉱物大臣(7月3日)、オウェイス水・灌漑大臣(10日)、ムアッシル経済担当副首相(12日))。
(2)アカバ訪問
4月15日にアカバに出張し、シュラーイデ・アカバ経済特区長官を表敬しました。アカバは紅海に面したヨルダン唯一の港で、物流の拠点でもあり、また、イスラエル、サウジアラビアと国境を接し、対岸がエジプトという戦略的にも重要な地です。一方で、透明度の高い海で有名な観光地でもあり、今後の発展が期待されるところです。
5.在留邦人の皆様との関わり
3月16日には大使館の多目的ホールでヨルダン日本語補習校の卒業式が行われ、私も挨拶をさせて頂きましたが、4月13日に、同校の庭で行われた入学式でも挨拶をさせて頂きました。補習校では約20名の児童が毎週金曜日(ヨルダンでは休日です)の午前中に国語と算数を熱心に学んでいます。
また、5月11日には日本人会総会に出席させて頂きました。これは毎年一回行われるもので、会長等役員が交代する場でもあります。その後行われた懇親会も含め、当地に約320名いる邦人の約3分の1の百人以上の方が出席されました。
なお、本年6月1日以降、最終住所地の市区町村の選挙管理委員会選挙人名簿に登録されている方が、当該市区町村から直接国外に転出する場合には、国外転出時に,当該市区町村の選管に対して在外選挙人名簿登録の申請(出国時申請)を行うことができるようになりました。これにより、今後本邦から外国に引っ越される方は,今まで3ヶ月以上かかっていた、在外選挙人登録に必要な期間が大幅に短縮されることになりますので,ご承知おき下さい。
6.なでしこのアジア杯優勝
4月6日から20日まで二週間にわたり女子サッカー・アジアカップの決勝大会が8チームの参加を得てアンマンの二つのスタジアムで開催され、なでしこジャパンは5試合を戦い、見事に優勝しました。同大会は明年フランスで行われる女子サッカーW杯の予選を兼ねており、5位以上のチームには出場権が与えられるという点でも非常に重要な大会です。日本は一次リーグは初戦のベトナムに快勝したものの、続く韓国戦、豪州戦はいずれも引き分けに終わる苦しい滑り出しでしたが、岩渕、熊谷両選手以外はメンバーを固定せず、毎試合先発メンバーを変えるという高倉監督の見事な采配もあり、準決勝で中国、決勝で豪州を破って、ベトナムで行われた前回大会に続き、優勝を飾ってくれました。
7.安全上の注意喚起
最後に、皆様の安全について、一言触れさせて頂きます。
6月上旬にはジェラシュの遺跡内で,邦人男性が被害者となる強盗事件が発生しました。被害者の方は腕を切られて傷を負いましたが、幸い,それ以上の大事には至りませんでした。本年に入りヨルダンにおいても,一般的な経済状況の悪化と共に、一般治安の悪化が懸念されております。中東の周辺の国との比較では、ヨルダンの状況はまだそれほど深刻なわけではありませんが、人通りの少ないところや夜間などでは特に注意を怠らないよう,お願いいたします。
また、5月末から6月初めに行われたデモは、幸い殆どの地域で暴力的な事態に発展することはありませんでしたが、デモは場合によっては、一部暴徒化する可能性もあり、また、テロの対象になる可能性もあるので、日頃から報道やSNS等により最新の関連情報の入手に努めると共に、集会など大勢の人が集まる場所に不用意に近づかない等、自らの安全確保に十分な注意を払って下さるようお願いいたします。
また、国外に旅行に出られる際には、「たびレジ」に登録頂くよう、よろしくお願いいたします。
駐ヨルダン特命全権大使 柳 秀直
<過去のご挨拶>
以下、この期間の出来事について簡単にご紹介したいと思います。
1.日本からの要人訪問
(1)安倍総理大臣のヨルダン訪問
安倍総理ご夫妻は4月30日から5月1日にかけて,中東歴訪の一環として、約3年4ヶ月ぶりにヨルダンを訪問されました。ヨルダンでは限られた日程の中で、アブドッラー2世国王陛下、ムルキー首相(当時)との会談が行われた他、同行した経済人にヨルダン側の経済人も加わった拡大午餐会が開催されました。その後、安倍総理は内外共同記者会見を開き、今回の訪問を総括されました。今回の訪問においては、総理と国王陛下は,両国の関係を戦略的パートナーシップに格上げすることに合意すると共に、この機会に、廃棄物処理場の状況改善のための上限額16億3100万円の無償資金協力プロジェクトについての交換公文が署名されました。また、経済人の同行がヨルダン側から高く評価されるなど、実り多い訪問となりました。
(2)河野外務大臣の訪問
河野大臣は4月28日から30日までヨルダンを訪問し、28日から29日にかけては、アカバでテロに関する国際会議に出席され、29日夜には,死海のほとりのホテルで、「平和と繁栄のための回廊」第6回四者閣僚級会合に出席し、ヨルダン、イスラエル、パレスチナと共に、パレスチナの閣僚と共に、ジェリコ農産加工団地(JAIP)の進展,及びJAIPとアレンビー/キングフセイン橋間の物流環境の整備と発展について議論が行われました。また、30日朝にはアンマンで、米上院の承認を受けた直後にヨルダンを訪問したポンペオ米国務長官と会談を行っています。
(3)木原稔財務副大臣の訪問
5月8日から9日にかけて、死海のほとりのホテルで開催されたEBRD(欧州復興開発銀行)の総会に出席するために木原財務副大臣がヨルダンを訪問され、この機会にザアタリ難民キャンプを訪問し、また、ファーフーリー計画・国際協力大臣(当時)と会談しました。同会談にはマルハス財務大臣(当時)も加わり、ヨルダン政府の財政・税制改革について説明すると共に、日本からの円借款供与についての強い期待が表明されました。
(4)佐藤正久外務副大臣の訪問
7月5日から7日まで、佐藤外務副大臣がヨルダンを訪問されました。副大臣はヨルダン政府のラウジー外務次官、カウワール計画・国際協力大臣、フレイハート軍統参議長と会談した他、日本の援助で建設中のペトラ博物館、そしてザアタリ・シリア難民キャンプ、シリアとの北部国境、日本が国際機関経由で支援した過激化防止センターなどを視察されました。また、当地の邦人企業の代表、国際機関の邦人職員、青年海外協力隊員とも懇談の機会を持ちました。
2.政権交代
ラマダン月の5月末から6月初めにかけて、政府の所得税法改正案、及び電気代、ガソリンの値上げに反対する大規模なデモが発生し、6月4日、ムルキー首相(当時)は辞表を提出し、ラザーズ前教育大臣が新しい首相に指名され、14日にラザーズ内閣が発足しました。前内閣から16名の閣僚が留任・横滑りするする中で、内閣交代の原因が経済政策にあったこともあり、中心的な経済閣僚はほぼ一新されました。電気代、ガソリンの値上げは6月1日には国王によって撤回され、所得税改革も一旦法案は撤回されましたが、所得税改革はヨルダンの財政再建に必要とされるので、新政権としても向き合わなければならない課題です。
3.経済協力関係
4月3日にウトム地方行政省次官の立ち会いの下、「経済社会開発計画・廃棄物分野」の機材(ブルドーザー、ホイールローダー等)供与式に、また、4日にはガッザーウィー水灌漑相(当時)の立ち会いを得て、「経済社会開発計画・水分野」の機材(カーゴトラック)供与式に出席しました。また、3月から7月にかけて,今年2月に我が国が補正予算から難民用プロジェクトのために予算をつけた国際機関(UNHCR、UNRWA、FAO)との間で、我が国の貢献をプレイアップする式典を行いました。
また、日本政府は4月24日、ブラッセルで行われたシリア難民支援のための国際会議において、新たに総額1400万ドルの支援を表明。内訳は米国の拠出大幅引き下げに伴い財政難にあえぐUNRWAに1千万ドル(うち200万ドルはヨルダン分)、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、UNICEF(国連児童基金)にそれぞれ200万ドルずつ(うちそれぞれ100万ドルがヨルダン向け))となっています。そのうち、UNRWAについてはUNRWAが運営する26の保健センターに医薬品を届け質の高い保健サービスを提供する等の内容で、5月13日にバルカ県バカア保健センターで、プロジェクト開始式典が行われ、また、UNHCRについては、北東部の医療分野のための支援プロジェクトについて、6月26日にザアタリ難民キャンプにて、プロジェクト開始式典が行われ、いずれも私が出席しました。
以上の式典においては、先方のスピーチにおいて、それぞれ日本政府への深甚なる謝意が伝えられています。
4.私のヨルダン側要人との会談
(1)閣僚表敬
4月26日にムバイヤディーン内務大臣、7月10日にフネイハート農業大臣を表敬しました。また、前述の内閣の交替を踏まえて、新たに就任した閣僚を6月末から順次表敬し、新内閣の方針を聴取しました(キスビー公共事業大臣、カウワール計画・国際協力大臣、ハンムール貿易投資供給大臣(以上6月28日)、ザワーティー・エネルギー鉱物大臣(7月3日)、オウェイス水・灌漑大臣(10日)、ムアッシル経済担当副首相(12日))。
(2)アカバ訪問
4月15日にアカバに出張し、シュラーイデ・アカバ経済特区長官を表敬しました。アカバは紅海に面したヨルダン唯一の港で、物流の拠点でもあり、また、イスラエル、サウジアラビアと国境を接し、対岸がエジプトという戦略的にも重要な地です。一方で、透明度の高い海で有名な観光地でもあり、今後の発展が期待されるところです。
5.在留邦人の皆様との関わり
3月16日には大使館の多目的ホールでヨルダン日本語補習校の卒業式が行われ、私も挨拶をさせて頂きましたが、4月13日に、同校の庭で行われた入学式でも挨拶をさせて頂きました。補習校では約20名の児童が毎週金曜日(ヨルダンでは休日です)の午前中に国語と算数を熱心に学んでいます。
また、5月11日には日本人会総会に出席させて頂きました。これは毎年一回行われるもので、会長等役員が交代する場でもあります。その後行われた懇親会も含め、当地に約320名いる邦人の約3分の1の百人以上の方が出席されました。
なお、本年6月1日以降、最終住所地の市区町村の選挙管理委員会選挙人名簿に登録されている方が、当該市区町村から直接国外に転出する場合には、国外転出時に,当該市区町村の選管に対して在外選挙人名簿登録の申請(出国時申請)を行うことができるようになりました。これにより、今後本邦から外国に引っ越される方は,今まで3ヶ月以上かかっていた、在外選挙人登録に必要な期間が大幅に短縮されることになりますので,ご承知おき下さい。
6.なでしこのアジア杯優勝
4月6日から20日まで二週間にわたり女子サッカー・アジアカップの決勝大会が8チームの参加を得てアンマンの二つのスタジアムで開催され、なでしこジャパンは5試合を戦い、見事に優勝しました。同大会は明年フランスで行われる女子サッカーW杯の予選を兼ねており、5位以上のチームには出場権が与えられるという点でも非常に重要な大会です。日本は一次リーグは初戦のベトナムに快勝したものの、続く韓国戦、豪州戦はいずれも引き分けに終わる苦しい滑り出しでしたが、岩渕、熊谷両選手以外はメンバーを固定せず、毎試合先発メンバーを変えるという高倉監督の見事な采配もあり、準決勝で中国、決勝で豪州を破って、ベトナムで行われた前回大会に続き、優勝を飾ってくれました。
7.安全上の注意喚起
最後に、皆様の安全について、一言触れさせて頂きます。
6月上旬にはジェラシュの遺跡内で,邦人男性が被害者となる強盗事件が発生しました。被害者の方は腕を切られて傷を負いましたが、幸い,それ以上の大事には至りませんでした。本年に入りヨルダンにおいても,一般的な経済状況の悪化と共に、一般治安の悪化が懸念されております。中東の周辺の国との比較では、ヨルダンの状況はまだそれほど深刻なわけではありませんが、人通りの少ないところや夜間などでは特に注意を怠らないよう,お願いいたします。
また、5月末から6月初めに行われたデモは、幸い殆どの地域で暴力的な事態に発展することはありませんでしたが、デモは場合によっては、一部暴徒化する可能性もあり、また、テロの対象になる可能性もあるので、日頃から報道やSNS等により最新の関連情報の入手に努めると共に、集会など大勢の人が集まる場所に不用意に近づかない等、自らの安全確保に十分な注意を払って下さるようお願いいたします。
また、国外に旅行に出られる際には、「たびレジ」に登録頂くよう、よろしくお願いいたします。
駐ヨルダン特命全権大使 柳 秀直
<過去のご挨拶>




